磯村良蔵,“45年のおもい”-固溶体(同窓会誌)からの抜粋

    (前略)鉄研時代18年もの間コツコツとやった鋼の熱処理残留応力の研究をまず挙げよう.(中略)ひとがあまりやらず,自分のたちに合ったものとして辿りついたのが上述のテーマだ.この残留応力は単に熱処理にともなう必要悪というだけでなく,強度面では功罪両面で金属組織と並ぶ大きな影響力を持つものだという認識が当時にはあり,国鉄内でも重要車両部品の疲れ強さに関連してしばしば問題になっていた.

    大体,残留応力というテーマは機械屋と材料屋の谷間のものであり,しかも測定には技量のほか時間と忍耐がやたらに要求されるため,これに身を投ずるには相当な覚悟が必要な領域とされていた.熱処理残留応力ということになると高硬度相手で測定が困難になるのでなおさらのことである.事実,(中略)実用鋼直接ということになると系統的な研究は見当らなかった.

    このような背景から,放電加工を利用し,抵抗線歪計を使ってザックス法(円柱の中心軸沿いに穿孔して表面の軸方向歪・接線方向歪を測定する.孔径が順次大きくなるように穿孔してその都度歪測定を繰返し,厚肉円筒の理論で円柱内部の残留応力分布を算出する)により実用鋼の熱処理残留応力を正確,詳細に測定し(放電穿孔では孔内面にごく薄い変質層が生じ,残存壁厚が薄くなると計測歪に無視できない誤差が入ってくるから,壁厚がある程度以下になったら穿孔法を硝酸腐食に切替えることにした),熱処理諸条件・鋼種・質量その他をいろいろに変えたときの残留応力分布の変化を硬さ分布・組織分布と対応させながら仔細に検討しようというわけである.(後略).

   

アリモテック
    アリモテックは2002年6月に設立されました.

       有限会社 アリモテック
       取締役 有本享三
       〒596-0825 岸和田市土生町4-3-2-701


    2008年10月より,Granta Design社との契約に基づいてCES EduPackをご紹介しています.

アリモテックロゴの由来 
 
    アリモテックのロゴに描かれている4種の山は,水焼入れによってCr鋼円柱内に生じた残留応力の分布に対応しています(以下の磯村良蔵氏の報告に関連情報あり).鋼中の炭素量によって分布の形状が異なります.
磯村 良蔵, 1961, "鋼の熱処理応力", 鐵と鋼 : 日本鐡鋼協會々誌, Vol. 47(7), pp. 936-950.     

磯村研究に関連する有本の報告:

有本 享三,“熱処理シミュレーションとSachs法”,機械の研究,Vol. 55(3),pp. 365-372, 2003.

原稿(限定範囲)のPDF

    (前略)最後の計算のマニュアルまで含め,測定結果に自信が持てるようになるまで3年近くを掛けて徹底的に準備したが,この自信が,測定で得た残留応力分布を存分に吟味・検討して何がしかの研究成集が得られたベースになったと思う.


    以後,永年にわたってつぎつぎに実験を計画し,コツコツと測定を遂行し,残留応力分布の成因や種々の因子の影響を大筋で解明し,新しい知見もいろいろと得られた.(後略)

    近頃は面倒な測定を志す人はますます少くなり,代って最近の有限要素法を武器に熱弾塑性論で計算することが活発になってきたが,計算法では当然ながらその結果を随時,測定結集でチェックする必要があり,このようなことから長年にわたる小生の研究成果も当分は生きてくれるものと思っている.

    この研究では,戦前の理研のよき時代にそこで助手の心得を修めた佐藤初吉氏がアシスタントをつとめてくれた.同氏の計測面での絶大な協力がなかったら.実験はとても遂行できなかったと思っている.

    (前略)以前から,残留応力測定法の権威,北大・機械の土肥教授から学位請求について熱心なお奨めを頂いていたが,(中略)意を決し,この研究の大部分を学位論文(注)にまとめることができ,昭和59年に学位も頂戴した.(後略)

注記:学位論文は“鋼の熱処理と残留応力”(アグネ技術センター,1996)として出版されている.