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ステンレスの窒化への適用事例

 

   ここでは,ステンレス鋼の窒化における残留応力と変形に対し,MUSIMAPのシミュレーションを適用した事例をご紹介します.

 

残留応力分布のシミュレーション

   オーステナイトステンレス鋼を低温で窒化すると,表面に拡張オーステナイト層が生じることが知られています.図1では,AISI 316鋼の小型試料を44522hガス窒化した後の窒素濃度分布に対し,実験とシミュレーションの結果を比較しています(1).窒化ポテンシャルKN3段階(N1: 0.293N2: 2.49N3: ∞)に設定されており,実験データについてはこれが1.41の場合のみが示されています.図の縦軸は窒素の副格子濃度yNであり,たとえばこれが0.3の場合が約23at%N (7mass%N)に相当します.なお,図中で記号MmobileIimmobileであり,それぞれはオーステナイト中での窒素が拡散可あるいは不可の状態にあることを示します.

 

1 窒素濃度分布

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   図2では,窒化後に測定された深さ方向の残留応力がマーカー(2)で表示されています.拡張オーステナイトに関しては,シミュレーションで必要となる材料特性データに対する報告がほとんどなされていません.ただし,窒素の侵入による格子の膨張量は測定されており(3),これと通常のステンレス鋼の特性データを用いたシミュレーションからは,図中のライン(without creep)に示すように絶対値の非常に大きな圧縮残留応力が得られました.一方,クリープ現象を考慮すると,図中のライン(with creep)に示すように実験値に傾向が近づきました.ただし,過去の文献からは拡張オーステナイトに対するクリープデータが見いだせないため,ここでは材料パラメータを試行錯誤で設定しています.

 

2 残留応力分布

 

 

板の曲りの変化に対するシミュレーション

 

   もう一つの例として,ステンレス鋼の板に対し,片側から低エネルギー注入窒化(low-energy implantation with nitrogen)を行なった際の曲り現象(4)MUSIMAPを適用しました.板試験片は縦横10×30 mm,厚さ1 mmですが,図3に示すハッチングの範囲にシミュレーションを適用しました.

 

3 窒化中の曲りに対するその場測定用の試験片

 

 

  試験片は温度40063 min窒化され,窒化の停止後も90minまではそのままの状態で保持されました.窒化中の曲りの変化がその場測定されており,図4に示すように試験片の曲率に対する時間変化(Sienz et al.)が得られています(4).この図より,最大で曲率半径5mの曲げが生じたことが読み取れます.この試験も前の残留応力測定と同様に種々の特性や解析条件が不明確ですが,これらを推定することによってミュレーションを試みました.

   まず,図4に示すように,クリープ現象を無視したシミュレーションでの曲率変化ライン(without creep)は,絶対値が測定値(Sienz et al.)よりも大幅に大きくなりました.一方,クリープを考慮し,そのパラメータを試行錯誤で設定すると,図中のライン(with creep)に示すように測定値に接近させることができました

図4 窒化中の板の曲率変化

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   以上のように,現時点では材料特性データが明瞭でないこともあり,実験とシミュレーションの結果が厳密に一致するまでに至っていません.しかし,このシミュレーションにより,今まで理解が困難であった現象を解明するための手がかりが得られたものと考えています.

 

   なお,図5では,シミュレーションから得られた各種ひずみの長手方向成分を,図3Y軸に沿って描いています.これによって,深さ20μmの範囲で生じる拡散,弾性およびクリープの各種ひずみの変化が,板厚1mmの範囲における全ひずみの線形分布をもたらしていることが分ります.全ひずみ分布の最大の傾斜状態が,明らかに曲率半径5mの曲りに対応しています.

 

   図5からは,板の曲りは窒素が侵入することによるオーステナイト格子の膨張(拡散ひずみ)で生じるが,クリープひずみの発生がこれを減じる方向に寄与することが分ります.

5 窒化中のステンレス鋼板試験片に生じる各種ひずみ分布の変化

 

 

 

 

 

 

 

参考文献

(1) Christiansen, T., Dahl, K. V. and Somers, M. A. J., 2006, “Simulation of Nitrogen Concentration Depth Profiles in Low Temperature Nitrided Stainless Steel”, Defect and Diffusion Forum, Vols. 258-260, pp. 378-382.

(2) Christiansen, T. and Somers, M. A. J., 2004, “Simultaneous Determination of Stress and Composition Profiles in Expanded Austenite Obtained by Low Temperature Gaseous Thermochemical Treatment of AISI 316” in “Low Temperature Surface Hardening of Stainless Steel”, Ph. D. Thesis, TechnicalUniversity of Denmark, pp. 217-245.

(3) Christiansen, T. and Somers, M. A. J., 2006, “Controlled Dissolution of Colossal Quantities of Nitrogen in Stainless Steel”, Metall. and Mater. Trans. A, Vol. 37, pp. 675-682.

(4) Sienz, S., Mandl, S. and Rauschenbach, B., 2002, “In Situ Stress Measurements during Low-Energy Nitriding of Stainless Steel”, Surface & Coatings Technology, Vol. 156, pp. 185-189.

(5) Arimoto, K., Ikuta, F., Yamanaka, S. and Funatani, K., 2008, “Development of Simulation Tool for Predicting Distortion and

Residual Stress in Nitrided Parts”, 2nd International Conference on Distortion Engineering, Bremen, Germany, 17-19, Sep., 2008, pp. 461-469.